患者は44歳、女性。乳幼児期にアトピー性皮膚炎と4〜5歳の頃に喘息の既往歴有り。6歳以降アレルギー性鼻炎あり。
約4年前から顔面に皮疹が出てくるようになり、皮膚科にて治療しているが、軽快と増悪を繰り返し、なかなか治癒しませんでした。ヘルペスについては以前から時々口びるのはしに出ることがあったが、すぐ治っていました。しかし、最近鼻の下に出るようになり慢性化してきていました。2001年(H13年)4月23日漢方治療を求めて当院に来院しました。
身長164.3cm、体重51.5kg、血圧130/82、睡眠と食欲は普通。便通は1日に1行、排尿回数は日中7回で夜間1回。口渇が軽度にあり、水分はよく摂る。発汗しやすく、めまい、立ちくらみはない、足が少し冷えやすい。生理は不順で、生理痛はない。
脈候はやや浮・小・弱、舌候は湿潤して薄い白苔あり。腹候は腹力中等度、臍の上下に悸動があり、胸脇苦満はなく、両腹直筋の攣急は軽度で、その他特別な所見はない。
皮膚は乾湿中等度で、顔面全体に発疹が認められる(写真参照)。
甘いものはあまり摂取しないが、果物や餅米類(おかき)が大好きでよく摂取しているとのこと。
全体像から判断して、陽証で、実証であり、アトピー性皮膚炎のあることは確かなので、白虎加人参湯(但し、人参4g 石膏48g)を投与しました。もちろん、果物や餅米類(おかき)の過剰摂取は控えるように注意しておきました。
初診時より約2週間後(2001年5月7日)に来院した時には、大変よく改善している状態でした(写真参照)。同一薬方にて経観しました。
初診時より約4週間後(2001年5月21日)に来院した時には、殆ど完治に近い状態にまで改善していました(写真参照)。「甘いものなど」の過剰摂取はしないように努力してきたようでした。同一薬方にて経観しました。
初診時より約6週間後に来院した時には、完治してしまっていましたが、患者さんは鼻の下のヘルペスの皮疹はよく出てくるので、心配とのことでした。念のため同一薬方を処方しておきました。
初診時より約8週間後(2001年6月18日)に来院した時には、鼻の下の所の皮疹(ヘルペスの皮疹)だけが、また、しっかりと出現していました(写真参照)。そこで、同一薬方に黄連を追加して経観しました。
初診時より約10週間後(2001年7月2日)に来院した時には、大変改善されているようでした(写真参照)。同一薬方にて経観しました。
初診時より約12週間後には、さらによくなっていて、約14週間後(2001年7月30日)に来院した時には、ほぼ完治の状態になっていました(写真参照)。その後、1ヶ月半ほど同一薬方を処方して、廃薬としました。
廃薬より約6ヶ月後に患者に会いましたが、その後、ヘルペスも出ず、大変具合がよいとのことでした。
本症例は既にヘルペスに有効なゾビラックスなどの内服もしていたのに効かなかったようです。鼻の下のヘルペスの皮疹は特に痛いようですし、顔面のアトピー性皮膚炎の皮疹が悪化した時は特に痛くて、痒かったそうです。
「体質改善」の治療がアトピー性皮膚炎の皮疹の改善のみならず、ヘルペスの皮疹の改善および予防にも効果があるように思えるこの症例は大変に興味深いことです。