患者は21歳、女性。約3年前より、尋常性坐瘡(にきび)がひどくなりだし、特に生理前には便秘がひどくなりにきびも悪化する。便通は1日1行あるがすっきりとは出ず腹が張って苦しい。知人に教えられて1982年6月17日当院に来院した。
身長はやや小さく、栄養は中等度で色白である。腹侯は腹力中等度、腹直筋の攣急も中等度あるが、その他特別の所見はない。やや虚証であり、おだやかな瀉下作用を持った処方が適方と思われたので桂枝加芍薬大黄湯を3週間分処方した。
3週間後には便通が1日2〜3行となり、にきびも一時的に余計出てきたけれども、そのあと少なくなったとのことであった。しかし、まだ皮疹が認められるので同一薬方にヨクイニンを10g追加して様子をみていった。
3ヶ月後にはまだにきびが散在しているが、半年後になるとかなり減ってきている。この時5週間同一方を処方してから、1年4ヶ月間患者さんは来院していなかった、その間状態は良かったようである。
初診時より1年9ヶ月後、最終診察日から1年4ヶ月後の1984年3月1日、また便秘とにきびの悪化、生理不順などを訴えて来院した。そこで桂枝茯苓丸料にヨクイニン12gと大黄4gを加えた処方を出した。約2ヶ月後の1984年4月24日にはかなりきれいになっていったが、以前の薬の方が飲みやすく便の出も良いので、前の薬を希望された。そこで、以前の薬方、すなわち桂枝加芍薬大黄湯加ヨクイニンを処方した。以後はかならずしもきちんと服用していた訳ではないようだが、良い状態が続いていった。
この症例からは適方は必ずしも1つではないことが伺える。