博物画の愉しみ

DUPERREY. Louis Isidore. Voyage autour du monde, execute par ordre du Roi sur La Corvette de Sa Majeste  La Coquille, pendant les annees 1822, 1823, 1824 et 1825.
デュプレ「コキーユ号航海記」1826-34、ボラボラ島


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Preface
 博物画は美しい!とにかく実物を見れば感動します。どうしてこのような美しいものができたのか?詳しい解説は諸先輩方にまかせて、博物画を愉しむための情報をここでは掲載します。
 博物画とは簡単にいえば博物図鑑などに印刷された挿絵のことです。博物学、自然史(natural history)は今や過去の学問ですが、その昔西欧では大変なブームであったそうです。特に18世紀から19世紀、大探検航海時代には、異国の地からもたらされる新しい動植物や自然すべてのモノが博物画の対象となりました(わくわくに満ちたうらやましい時代ですなー)。当時は大量印刷術も発達していなかったため、木口(こぐち)木版、銅版、石版などの技法で印刷され、しばしば手彩色が施されています(手仕事はいいですなー)。現代からは想像もつかない程手間のかかった高度な印刷物です。そこには現代の大量印刷物にはない深い味わいと精緻さがあります。
 日本では荒俣宏先生の諸著作を抜きにして博物画は語れません。アラマタ氏は早くから博物画の持つ恐るべき美しさに開眼され、手つかずの大海を一人泳いで来られました。荒俣先生には世界大博物図鑑(平凡社)という、アラマタ氏以外には書き得ないとても人間技とは思えない程の大傑作があります(この貴重な図譜満載の図鑑が、全5巻で対価6万数千円で手に入るとはなんとすばらしいことでしょう!)。しかし、荒俣先生の真似をしてもしょうがありません(真似のしようもありません)。このページでは荒俣先生の諸著作からはすぐにはわからない日本における博物画情報を掲載します。
 私自身には博物画の美しさはもちろん、その押しつけがましさのなさも大きな魅力です。絵画では画家の自我が前面に出過ぎていて、時に鬱陶しく感じることがありますが、博物画は目的と対象に制約がある上、彫版師、印刷師、彩色家(イリュミネーター)との共同製作になりますので、おのずと自制が効くことになります。歴史的にも博物画は芸術と科学の狭間で揺れ動いており、きちんと評価されるようになったのは比較的新しいことのようです。
 お部屋の趣味の良いインテリアとして飾るも良し、博物画ポストカードを集めるも良し、流行りのボタニカルアートの手本にするも良し、あるいは当時の巨大で大仰な古書をまるごと購入し所有するという博物画コレクションの王道を行かれるも良し、どんな形であれ博物画をもっと楽しみましょう。

Mark Catesby



New acquisition and diary

2008.08.04
いやまた2年振りの更新になってしまいました。インターネットのニュースに本ページでもリンクを設けていたAdvanced Book ExchangeがAmazonに買収されると出ていました。古書の売買がより身近になるのでしょうか。
国内で丸善書店などを中心にボタニカル画の展示販売会を催しているOrangerie Collection
のURLが変わり、またさかんに展示会も開いています。URLを更新しておきます。

2006.05.21
いやまた1年振りの更新になってしまいました。最近荒俣宏先生のBlogがあることを教えていただきました。題して荒俣宏のオークション博物誌。昨年の10月から始められていました。荒俣先生の豊富な写真とテキストがブログで読めるなんてこんな幸せなことはありません。「死ぬまで買い続けるぞ!」なんていうサブタイトルもついていて嬉しくなってしまいました。

2005.02.20
またまた1年以上、いや2年近くの御無沙汰となってしまいました。最近このページをご覧になった方からメールをいただき、和書のところにいくつか追加いたしました。
画像の更新がないのも寂しいので、以前に購入したGazette du Bon Ton No-7 1921のポショワール刷り版画を載せておきます。 「ガゼット・デュ・ボントン」については雑誌を購入したAriaに詳しい解説がありますので、そちらを御参照のこと。
http://www.aria-indigo.com/print/costume/gbt/index.htm

Bon Ton

Bon Ton

Bon Ton

Bon Ton

Bon Ton

Bon Ton


2003.05.14
1年以上のご無沙汰になってしまいました。ちょこちょこ図譜の購入などしていたのですが、紹介する程のものでもなく更新が滞ってしまいました。4月に久しぶりにILABを通じ、Gemini Fine Books & Arts, Ltd.からUmberto Brunelleschiの挿し絵本「Le radjah de Mazulipatam」を購入しました。アール・デコ マスターといわれたUmberto Brunelleschiらしい美しい挿し絵が見られます。
Umberto Brunelleschiも後の時代にはアール・デコから離れ、より具象的な作風に移行していきます。後期の作風が好きだとGemini Fine Books & Arts, Ltd.の担当者は言っていましたが、私はやはりこの時代のものが好きです。新しいスキャナーも調達しましたので、挿し絵を存分にご紹介します。
Umberto Brunelleschi「Le radjah de Mazulipatam」

2002.02.17
船便のためロンドンから2ヶ月と2週間かかって、有名なS. Peter Dance著「The Art of Natural History」が届きました。大判で図版もきれい、本の程度も良く到着の遅れは忘れました。これから暇な時に中身も読んでみましょう。

2002.02.06
古本屋から荒俣先生の「Fantastic Dozen」(リブロポート、1991年刊)の第7巻「熱帯幻想」を入手しました。憧れのコキーユ号航海記録の熱帯風景手彩色図譜が多数収録されていて感激でした!古本屋に全巻 (1-12) 揃いを注文してしまいました!

2001.12.06
本のserch siteにbiblio.comとAlibrisを追加しました。両者とも大変優れたサイトです。大抵の本が見つかります。

2001.11.30
Antiquariaat Junk B.V.から'Recent acquisitions'の目録が送られてきました。以前emailでカタログを希望した時には、"The best way to see what we have in stock is to visit our website"と一蹴されてしまったのですが、1冊購入したせいで「一見さんお断り」から脱したのでしょうか。カタログは詳しくためになるものでした。検索にはweb、拾い読みにはやはり印刷物ですね。

2001.11.10
注文していたNissenの書誌「Die Illustrierten Vogelbucher」が届きました。予想より程度がよくうれしかったです。しかし、きょうび米国からの郵便物にはドキドキです。

2001.11.03
Googleの新サーヴィス イメージ検索で憧れの「コキーユ号航海記」の図譜を見つけましたので扉絵に使ってみました。タヒチ、ボラボラ島、いいですね。

2001.09.23
Daniell William, Interesting Selections from Animated Nature with illustrative Scenary, 1809, 2Vols, Folio
動物と背景の奇妙な組み合わせに惹かれて初めて購入した古書。aquatint銅版画120葉。それにしても彩色版(後代に彩色?)があるらしいのが気になる。

気に入った幾葉のイメージ

Mark Catesby



Bibliography

和書
  • 大博物学時代、荒俣宏、工作舎、1982年、A5版、359頁
    博物学全体に対するエッセイ。巻末の参考文献集が素晴らしい。著者もまだどこか初々しい。

  • 図鑑の博物誌、荒俣宏、リブロポート、1984年(絶版)、A5版、308頁
    日本博物画シーンの嚆矢。集英社文庫に増補版1994年(絶版)もあったが、図譜の収録などが大分リブロポート版の方が多い。収録図譜にも10年間の趣味の変化が伺えておもしろい。

  • 世界大博物図鑑、荒俣宏、平凡社、1889-1991年、サイズ(cm): 26 x 18 、全7巻
    貴重な図譜が満載された驚異の図鑑。家庭に一セットは常備したい。個人で書いたとは思えない程の驚くべき労作である。1.蟲類、2.魚類、3.両生・爬虫類、4.鳥類、5.哺乳類、別巻1.絶滅・希少鳥類、別巻2.水生無脊椎動物

  • 花の王国、荒俣宏、平凡社、1990年、サイズ(cm): 30 x 23、全4巻
    美しく珍しい植物図譜と巻末の説明も秀逸。1.園芸植物、2.薬用植物、3.有用植物、4.珍奇植物

  • 花空庭園、荒俣宏、平凡社、1992年、A5版、豪華装丁版、301頁
    荒俣宏の美意識が浸透した、美しい装丁とレイアウト。一見の価値あり。

  • 彩色江戸博物学集成、上野益三他、平凡社、1994年、サイズ(cm): 26.5 x 20、501頁
    江戸期の博物画について作者別に分担執筆。西洋とはひと味違う日本の博物画が一覧できる。

  • 稀書自慢紙の極楽、荒俣宏、中公文庫、1997年、437頁
    博物画だけでなく20世紀初頭のファッション・プレート、書誌やオークションについての話も収録。

  • 花の図譜ワンダーランド、荒俣宏、八坂書房、1999年、A5版、255頁
    16世紀以前の図譜も扱っているところが新しい。ソーントン伝には涙。

  • 年表で読む荒俣宏の博物探検誌、荒俣宏、平凡社、2000年、A4版、176頁
    西欧航海史を図譜と年譜で綴る愉しい一冊。「コキーユ号航海記」の図譜も美しい。

  • 博物学の世紀、日本放送出版協会、荒俣宏、1988年、A5版、155頁
    NHK市民大学 1988年10-12月期テキスト。博物学の概観を得るには最良のテキストです。TV放映も見た覚えがあります。

  • Fantastic Dozen、荒俣宏、リブロポート、1990年、サイズ(cm): 25.5 x 19.0、全12巻
    タイトルを見てもわかる通りの荒俣ワールド。珍しい図譜満載のシリーズです。1.水中の驚異、2.神聖自然学、3.エジプト大遺跡、4.民族博覧会、5.地球の驚異、6.悪夢の猿たち、7.熱帯幻想、8.昆虫の劇場、9.極楽の魚たち、10.バロック科学の驚異、11.解剖の美学、12.怪物誌

  • WONDER BOOKS、荒俣宏、みき書房、1994年、サイズ(cm): 20.5 x 14.5、全5巻
    美しいファッションプレートの玉手箱。1.恋するアールヌーヴォー、2.不思議のアールデコ、3.おとぎの遊園地、4.天使のワードローブ、5.虹色草紙

  • ファッション画の歴史、荒俣宏、平凡社、1996年、A5版、235頁
    「これは西洋のファッション史と、その美術表現をめぐる小さな本である。主たる狙いは、美しくて奇妙ななファッション画の佳品を並べたショーウインドー、あるいは見本帖となることにある。」著者まえがきより。

  • 吉田初三郎のパノラマ地図、別冊太陽、平凡社、2002年、A4版、150頁
    大正・昭和の鳥瞰図絵師吉田初三郎の評伝と地図。初三郎のパノラマ地図はともかく楽しい(何故かどの地図にも富士山が描かれている!)。

  • 本草図説高木春山、荒俣宏監修、リブロポート、1992年、サイズ(cm): 25.0 x 26.0、117頁
    江戸期の知られざる本草家、高木春山の残した「本草図説」復刻版。







翻訳
  • 植物図譜の歴史、ウィルフリッド・ブラント著、森村謙一訳、八坂書房、1986年、サイズ(cm): 26 x 18、344頁
    読書中。辛口の批評家。Great Flower Booksの著者でもある。

  • ジョン・グールド 鳥人伝説、モゥリーン・ランボルン著、荒俣宏訳、どうぶつ社、1990年、サイズ(cm): 26 x 16、161頁
    鳥の図譜で有名なジョン・グールドの評伝。珍しい図譜制作過程の説明図などもあり。




洋書
  • Flower & Fruit Prints of the 18th and early 19th centuries, Gordon Dunthorne, 1938, Durau & Co.,Ltd. London, Folio 33x24 cm, 275pp
    大変有名な花とフルーツ図の書誌。巻末のCatalogue Raisonneは非常に詳しく特に有用。

  • Catalogue of Botanical Books in the collection of Rachel McMasters Miller Hunt, Jane Quinby and Allan Stevenson, The Hunt Botanical Library, Pittsburgh, 8vo 25x19 cm, Vol.1 Printed Books 1477-1700, 1958, 517pp, Vol.2 Part I Introduction to Printed Books 1701-1800, 1961, [ccxliv], Vol 2, Part II Printed Books 1701-1800, 1961, 655pp
    有名なHunt女史の植物画コレクション一覧と解説。かなり専門的。

  • Great Flower Books 1700-1900, Sachverell Sitwell and Wilfrid Blunt, 1956, Collins London, Large folio 49x34 cm, 94pp


  • Fine Bird Books 1700-1900, Sachverell Sitwell, Handasyde Buchanan and James Fisher, 1953, Collins & Van Nostrand, London and New York, Large folio 49x34 cm, 120pp


  • Die Botanische Buchillustration. Ihre Geschichte und Bibliographie, Claus Nissen, 1951/66

    Die Zoologische Buchillustration. Ihre Bibliographie und Geschichte, Claus Nissen, 1969

    Die Illustrierten Vogelbucher. Ihre Geschichte und Bibliographie, Claus Nissen, 1953, Hiersemann Verlag, Stuttgart, 4to 30.5X22 cm, 222pp

    大書誌学者Claus Nissenの広範で膨大な書誌群。ドイツ語

  • Thesaurus Literaturae Botanicae, G.A.Pritzel, 1872, Leipzig Brockhaus, 4to, 576pp
    私の持っているのはMaurizio Martino書店のリプリント版(1995)。ラテン語。

  • The Art of Natural History Animal Illustrators and their Works, S. Peter Dance, 1978, Country Life Books, Folio 34.5x24.8 cm, 224pp




番外編
  • カラカウア王のニッポン仰天旅行記、ウィリアム・アームストロング著、荒俣宏他訳、小学館、1995年、変A5版、333頁
    ハワイ王カラカウアの愉快な世界周遊記。図版多数収録。クルーゼンシュテルン周航図録の長崎の沿岸とオジロワシの図は奇妙なおもしろさ。

  • フローラ逍遙、澁澤龍彦、平凡社、1987年、A5版、224頁
    八坂安守氏による植物図譜多数収録。大変定評のある本ですが、図譜のプリントも平凡、装丁もとりたてていう程でもありませんな。

Mark Catesby



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    素晴らしいの一言。いつもお世話になっている、カナダのworld wide book検索サイト。

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    ここも恐ろしく豊富な書籍検索ができます。

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  • ILAB
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  • アリア
    博物画のインターネット販売可。基礎知識の解説も詳しい。

  • Orangerie Collection
    大変上品なマット装をしてくれます。丸善で毎年展示即売会を行っています。

  • キクオ書店
    博物学関係にも力を入れている京都の古書店。牧野富太郎の植物画を店頭で販売していました。

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