防已黄耆湯が奏効した尋常性乾癬(その3:外食)
  患者は39歳、女性。約20年位前より発疹が出はじめ、大学病院皮膚科やいくつかの病院にかかってきたが、改善しないためインターネットを見て、2001年(H13年)5月14日当院に来院した。
 身長153cm、体重53.5kg、脈はやや沈・小・弱、腹候は腹力やや実で、胸脇苦満は軽度、両腹直筋の攣急も軽度、臍傍の圧痛点なし。初診時の皮膚所見としては乾湿中等度で白く、全身に発疹が認められる。甘い物や餅米類(おせんべい、おかき)をよく食べ、肉食も多いし、酒も飲むとのことであった。全体像から判断し、基本薬方としては、大柴胡湯を使用してもよい印象だったが、それよりも胸脇苦満や腹直筋攣急の度合いが少ない感じがしたので、基本薬方としては、防已黄耆湯を選定し、その中の生薬の一種の黄耆を10gに増量したものを14 日分処方した。初診時より2週間後(写真参照)は、皮疹は増悪した印象であり、かゆみは強くなったとのこと。色々と問診したところ、ステロイドの塗布をやめたことが主な原因と判断されたので、同じ薬方を継続していったところ、約6週間後には皮疹も赤味もうすくなってきていた。「甘いもの」や「牛肉」の摂取は止めているとのことだった。初診より10週間後には、皮疹はますます改善されてきて、14週間後(写真参照)には皮疹はかなり改善されてきていた。その後は、22週間後(体重50kg)も26週間後(体重49.5kg)も皮疹はほぼ同様であったが、例年よりはかなり良い状態であるとのこと。なお、牛肉の摂取は控えているが、豚肉やポテトチップスは食べており、ビールものんでいるようでした。初診時より30週間後(体重49.8kg)(写真参照)に来院した時は皮疹は前回より少し増悪していた。問診によると、最近「外食」が多く、それが気になるとのこと、また果物は食べていないが、栗は1日に1ヶ食べているとのことでした。外食のなかに色々「甘いもの」が入っている可能性があるので、その事にも注意するように言って、同一薬方を処方し、その後も慎重に経過を観察中である。
 本症例は、20年来の尋常性乾癬が、防已黄耆湯の投与により約3ヶ月でかなりの改善を示したもので、この湯が適応薬方であることは確かと思われるが、「甘いもの」や「牛肉」の摂取をやめていったことも良い影響を与えたと考えられる。しかし、依然皮疹が少し残ったまま5ヶ月間続いているのは、日常生活の中で「甘味づけ体質」の改善がそれ以上に改善されなかったことを示しているとも考えられる。特に約5ヶ月後に皮疹が増悪した頃は「外食」が多かったため、食餌の注意は原則としてできなくなったと判断されるので、この皮疹はやはり「甘味づけ体質」との関連が考慮される。様々な内因性の皮膚病が難治性であるのも甘い食品が溢れかえっているこの現代社会においては、この「甘味づけ体質」の改善が困難なことを示している。

腹部前面
背部中央
腰臀部
初診時

(2001.05.14)

2週間後

(2001.05.28)

3ヶ月後

(2001.08.20)

7ヶ月後

(2001.12.10)

次項


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