桂枝茯苓丸料の加味方が奏功した再発性の慢性湿疹
 患者は20歳、女性。約6年前から湿疹が顔および全身に出来はじめ、近医(皮膚科)で加療してきました。夏は良いが冬は悪い傾向で経過してましたが、1992年3月に別の某大学病院を受診し、アトピー性皮膚炎でもアレルギー性皮膚炎でもないと言われました。知人の紹介により、1992年(H4年)3月31日に当院に来院し、漢方薬による治療をすることになりました。
 身長154cm、体重56kg、血圧102/64、睡眠と食欲は良好。便通は1日に1行、排尿回数は日中5回で夜間1回。口渇はなく、発汗しにくく、めまいや立ちくらみはなく、冷えもない。肩こりは、軽度で、生理は順調でした。
 脈候はやや沈・小・弱、舌候は湿潤して薄い白苔あり。腹候は腹力中等度、両腹直筋の攣急は軽度、臍傍の圧痛点はなく、その他特別な所見はありませんでした。
 初診時の皮膚所見としては乾湿中等度で白く、全身に発疹を認めていました(写真参照)。
 全体像から判断して、桂枝茯苓丸料加ヨク苡仁を基本薬方として選定し、大黄2gを追加した処方で経過観察しました。
 初診時より約2ヶ月半後(1992年6月4日)に来院した時には、皮膚が少し悪化しているように見える状態でした(写真参照)が、同一薬方にて経過観察しました。
 初診時より約4ヶ月半後(1992年8月4日)に来院した時には、かなり軽快してきいる印象でした(写真参照)。同一薬方にて経観しました。
 初診時より約11ヶ月後(1993年2月9日)に来院した時には、また悪化しておりました(写真参照)ので、冬瓜子2gを追加した薬方を処方しました。
 初診時より約1年半後(1993年9月28日)に来院した時には、改善してきていました(写真参照)ので、以後も同様の薬方で経過観察したところ、良い状態がつづいていました。
 初診時より約3年半後(1995年9月26日)に来院した時には、小さいぶつぶつがやや目立つようでした(写真参照)。「甘いもの」を食べているということなので、なるべくやめるようにすすめました。
 その後(初診時より約5年後および6年と3ヶ月後)も特に悪くなく経過していました(写真参照)。
 初診時より約7年半後(1999年9月26日)に来院した時には、再びやや悪化していました(写真参照)ので、尋ねてみますとケーキやアイスクリームその他、「甘いもの」を食べていたそうです。再び注意を促して同一薬方を処方しました。
 初診時より約8年と3ヶ月後(2000年6月30日)に来院した時には、ほぼ完治に近い状態でした(写真参照)が、患者は服用を続けていきました。
 2001年(H13年)1月24日、同一薬方に黄連1gを追加した薬方として以後、同一薬方を処方し続けましたが、同年10月25日が最後の処方でした。同年11月にめでたく結婚され、元気で生活していることを電話で確認しています。
 本症例のように良い状態が続いているのに、時々再発がみられ、その時の問診にて「甘いもの」の摂取が判明している点から考えると、このような慢性湿疹の再発については、原因不明とするよりも、やはり「甘みづけ体質」が関係すると考えておいた方が良いのではないかと思われます。

上背部 右下背部の拡大像
初診時

(1992.03.31)

約2ヶ月半後

(1992.06.04)

約4ヶ月半後

(1992.08.04)

約11ヶ月後

(1993.02.09)

約1年半後

(1993.09.28)

約3年半後

(1995.09.26)

約5年後

(1997.03.18)

約6年3ヶ月後

(1998.06.02)

約7年半後

(1999.09.29)

約8年3ヶ月後

(2000.06.30)


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